雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
遼の表情が一瞬、固まる。


けれど、そのあとすぐに薄く微笑んで、私の手をほどき立ち上がった。


「……気のせいじゃない?」

「遼、酔ってるの?」

「そうだね、飲みすぎたのかも」


キッチンへと歩いた遼は、水道水をグラスに注いで飲み始める。


「ねえ、もしかして。いつもは遼、自分のことを『俺』って言うの?」


私は『僕』としか聞いたことがないけど。

前に、陽介が話していたことを思い出す。

遼が私に見せているのは、ほんの一部分だというあの言葉。

それは、本当なのかもしれない。

私から見た彼は、真面目で優しくて、いつも穏やかで。怒ったりなんてしなさそうなイメージ。

でも今日の遼を見ていると、違う部分もあるような気がしてきた。


「私には、よそゆきの顔しか見せていないの?」


水を飲む彼の隣まで行き、顔を覗き込む。

空になったグラスを流しに置き、遼は濡れた唇を手の甲で拭った。


「……だったら、どうする?」

「ちょっと寂しいかも。私にはまだ心を許してくれてないってことでしょ?」

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