雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
②永い夜と君の誘惑
本当は別れてほしいと思ってる……。
紗矢花にとうとう本音を言ってしまった。
アルコールのせいなのか、自分の想いを抑えることができなかった。
彼女の薬指にはめられた指輪。
あれは見た感じシルバーではなく、その何倍も値段のはりそうなプラチナだった。
紗矢花は本当に黒瀬響にとって「一番の女」ではないのだろうか。
俺の目には少なくとも、紗矢花はとても大事にされているように映った。
確かに他の女の影はあるけれど……。
遊びの女を繋ぎ止めておくためだけに、わざわざ高い指輪まで買うものなのか?
黒瀬響の行動はよく読めない――。
頭を冷やすため顔を洗おうと洗面台に立った隙に、紗矢花はリビングから消えていた。
ソファの横にバッグはあるからまだ帰ってはいないようだ。
ふと寝室のドアが軽く開き、明かりが漏れていることに気づく。
普段は絶対に入らないのに、今日に限ってどうして――。
そのドアを開けるかどうか、しばらく迷う。
もし寝室に入らなければ、紗矢花はそのうち飽きて出てくるかもしれない。
それでも。
彼女の意図が気になって仕方がなく、誘われるままドアを開けてしまった……。