好きとは言えなくて…
佐倉君に抱き締められて必然的に顔の横には佐倉君の顔があってそのままの状態で佐倉君は私に囁く。


「俺も最初、最上に告白された時は嬉しかった。だからこそ信じて欲しい。
市川の事はちゃんとケリがついてるから」


「本当に?」


「あぁ。
俺も一つ言わせてもらっていい?」


「なに?」


「由衣子もさ。俺と同じで斉藤君という存在に逃げたよね?
ごめんなさいは?」


佐倉君は抱き締める力を弱めて私と目線を合わせるように少しだけ私から離れた。
そしてニヤッと意地悪い笑顔を見せる。


「それは…そうだけど。
佐倉君だって市川さんに逃げてたじゃない」



「うん。そうだね。
だから、俺もごめん。最上から逃げてた」


私からの反論をものともせずに佐倉君は謝った。


これは謝らないといけない雰囲気だよね?


「私もごめんなさい。斉藤君に逃げてました」


だから私も佐倉君に謝った。
すると、佐倉君はまたニヤリと笑った気がした。


今度は何!?



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