きみのとなり
「じゃあまた帰りな」
「うん」
鈴木君はニッと笑うと、私の頭をポンと触って去って行った。
私はそんな鈴木君の背中を見つめてぼーっとなる。
あの人が“彼氏”なんだ。
かっこいい…よね。
優しいし、運動できるし、バスケ部でモテるし、背は高いし、頭いいし…
完璧だよね。
「爽やかだねぇ」
「んー?」
私は梢がクスクス笑うから、鈴木君を見ていた視線を梢に向けた。
「未来、ずっと鈴木のこと見てる」
「…だって……」
「ふふっ。彼氏だもんねぇ?」
梢は空になったお弁当箱をしまいながら、からかうように言う。
“彼氏”
って…
「……そんなかんじなんだ…」
「何?」
「あ、こっちの話!」
「未来、今日気持ち悪いー!変だよー!」
「変じゃないよ!」
私は笑いながら梢の肩をバシバシ叩いた。
…梢、私…変だよ。
変…
おかしいの。
拓ちゃんのことばっかり考えちゃう。
鈴木君が彼氏なのに。
変だよ…