きみのとなり
私はその様子をぼーっと眺めるしかなかった。
「もっと、ちゃんと…私を見てよ…」
河野さんはやっと落ち着いたようで、流れる涙を拭いて拓ちゃんに抱き着いた。
「……」
ああ……
私…
「…未来、ごめん…一人で帰れる?」
私は拓ちゃんに話し掛けられ、ハッとして笑顔を作った。
「平気平気!!一人で帰るのなんか3年になってからずっとだし!…あ!コーン持つ!裕介に返しとくね!!」
私はそそくさと拓ちゃんからコーンを奪った。
「あ…ごめんな。未来」
拓ちゃん達に背中を向けて歩き出した時、拓ちゃんは申し訳なさそうな声で言った。
まったくだよ。拓ちゃん……
私、いい子ぶるの疲れちゃったよ…
でも…
「よゆー!!こんくらい平気だもーん!」
私はくるりと拓ちゃんに向き直って、真っ直ぐにピースした手を突き出した。
「じゃあね!拓ちゃん!…河野さんも…!」
疲れても…本当のことなんて言えないや…