きみのとなり


「拓ちゃんごめんね。こんな時間になっちゃって…」



私は夕日の光が射す中、コーンを持ってくれる拓ちゃんに謝った。




「え?いいよ別に。宿題終わらせてあるし。用事は特にないし」



「そう…」



「それに…俺から頼んだわけだし」



「……うん…」




私はサッカーボールをギュッと胸に抱きしめた。




「ほら、帰るぞ。裕介は真美ちゃん送ってけ」



「もちろん」



裕介は真美ちゃんと手を繋いで歩き出した。




「ほら、俺達も帰……」



私達も裕介達に続いて帰ろうとした時、拓ちゃんが急に黙って立ち止まった。




「…?…拓ちゃん?」




拓ちゃんはある一点を見つめて眉間にシワを寄せていた。



私は拓ちゃんの視線の先を辿った。




「…あ」



嘘…




「…彼女の私の誘いより、幼なじみの未来ちゃんの約束を優先させるんだ」



「…河野…これは…」



「っ…もう会わないでって言ったじゃない!!私は一番になりたいって…言ったじゃない!」


なぜか拓ちゃんを待っていた河野さんは、泣き叫んで拓ちゃんにしがみついていた。






< 76 / 338 >

この作品をシェア

pagetop