もう一つの甲子園
「赤い432の事か?」

「おやじさんの耳にも入っていましたか?」

「15分くらい前に、高木洋一郎の弟から電話があった」

「龍二から?」

「沢田、知ってるのか?」

「え、ええ。最近、俺達ワルの中では知らない者はいないくらいです。」

「ワルの中で有名なのか?・・・昔は真面目なやつだったのに・・・」

「それが、兄貴の事故死からだんだんおかしくなったって聞きました」

「そうか・・・仲の良い兄弟だったからな・・・」

「でも、びっくりしました。最速432の対決の相手がおやじさんだったなんて」

「ああ、俺と洋一郎は親友だった。今でもそう思っている。」

その時は、洋一郎が絶好調の時だった。
おれは、洋一郎がテングになってはならないと思って酒を呑みながら忠告した。
二人とも酔っていた。

「洋一郎、どうだ最速の男になった気分は?」

「神様がくれた才能!俺だけの才能!で勝ったの」

「おいおい。そんな事言ってていいのか?」

「俺がいればチームなんてどこでもいいっ」

「お前を支えていてくれてるのがチームじゃないかよ」

「うるへぇ!俺だけの力が有ればいいのっ」

「本気で言ってんのか?」

「本気で言ってんだよ、お前だって認めてるだろ?」

「認めてる」

「そらみろ」

「でもそれは、チームの中のお前をだ!」

「俺は一人でも最速だっ!」

俺達はだんだんと話に熱くなっていた。

「そこまで言うならプライベートで勝負するか?」

「おもしろい。それなら俺のプライベートカー432に勝てるか?」








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