聖夜の恋人
「麻紀妊娠大丈夫だったの?」
「うん、セーフだったわ。本当危ないんだからあいつ」
「のっち麻紀と結婚したいって言ってたもんな。だからやっぱり欲しいんじゃん?」
「そうは言ってもさ、あいつ貯金もないんだよ?子供なんか出来たら借金地獄だよ」
「貯金かー私から言わせてもらうと贅沢でうらやましい悩みだけどね」
「そう?あんたは現実味ないからねー」
「あっ客来たよ」
麻紀はそういってちょっと太めのおばさんに今人気の真っ赤なレースの下着を紹介した。
サイズないっつーの。
私の職場は下着を主に扱う百貨店の婦人服売り場だ。
麻紀と私は同期入社で仲がいい。麻紀はO型で適当だから似合う似合わないなど関係なしにとりあえず客に流行のものを紹介する。そしてA型できれい好きの私はめんどくさいサイズ探しをやることになっている。この役割り分担はもうずいぶん長いことやっていてタバコと火がセットのように麻紀と私はセットでないと役立たない。
恋愛も対照的で、麻紀は常に彼氏がいて常に男とセックスをしている。今はのっちという料理人の優しくておもしろい彼がいて文句を言いながらもラブラブ同棲中。のっちは麻紀のこと大好きだし、麻紀もなんだかんだいってまじめに付き合っているのはのっちが初めてだ。のっちとのセックスの話ししかしないところがまじめに付き合ってる証拠だ。
麻紀は誰かとセックスすると、あいつは早かったとか遅くて疲れたとか顔がいいのにとあそこの小ささにビックリして濡れなかったとか指の使い方がうまくて最高だったとか必ず細かく説明をする。人のセックス話なんて聞きたくないかもしれないけど私は意外に好きだった。
そんな麻紀ものっちとの付き合いはもうすぐ三年になる。そして最近子供や結婚の話がちらほら出てきているのだ。私は麻紀のそんな話を聞くたび、好きだけではやっていけない男女の現実を目の当たりにする。
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