粉雪舞い散る桜の匂い

「…君、嬉しい時哀しい時、この桜によく来るよね」

考え込むリツに、優しい声が向けられる。


「なんで…、知ってるんですか?…」

男の言葉に、驚き、顔を上げるリツ。

 
男は微笑み、粉雪が彩る桜を見上げ、

「あそこは、俺の特等席。街が一望出来て、季節が感じられる。」

静かに、柔らかい声。


「白雪の中、街の灯り。彩りの紅葉、銀杏並木。雨の雫に映える翠緑の葉、夏祭り…」

穏やかに流れる男の声、


記憶が戻る。四季折々とー

「そして、うららかな夢の宴、桜祭り…」


 憶い出す。あの日ー



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