好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

「説明する」という浩二に連れられて、私と直也は、広いフロアの一角にある喫茶コーナーに足を運んだ。


時間的にティータイムには中途半端なためか、利用者は一人もいない。


大きめの窓から一望できる中庭には、強くなり始めた夏の日差しの下、常緑樹が風に吹かれて緑の枝を揺らしている。


壁際に立ち並んだ、ジュース類の自動販売機の前に置かれている四人掛けの小振りの白いテーブルセット。


その一番奥に私たち、私と直也は、浩二と向かい合うように二人並んで腰をかけた。


「席を外そうか?」


いとこどうしの、家族会議的なニュアンスを感じたのか、直也が伺うように申し出た。


「いえ。篠原さん。あなたに、聞いて頂きたい話なんです」


そう言って、直也を見つめる浩二の瞳には、決意の色が見える。


直也に、聞いて欲しい話……?


胸の中の、嫌な予感が大きく膨らんでいく。


「篠原さん。単刀直入に、言います」


いつもより少し低いトーンの声音でそう言うと、浩二は、まっすぐ直也を見据えた。


「はい」


直也は、静かに頷く。


「亜弓には、好きな男がいます」


なっ!?


「こ、浩二っ!?」


いきなり、何を言い出すんだこのバカタレはっ!?


前置きなしの、浩二の爆弾発言に、私は思わず声を荒げてイスを鳴らして立ち上がった。

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