好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
初めて会ったときから、出来の悪い後輩OLの私を何かと気に掛けてくれた、厳しくて優しい先輩。
大好きだった。
メガネの奥の優しい眼差しも。
頭を撫でくれる、大きくて温かな手のひらも。
その腕の中にいれば、いつだってとても安心できた。
だけど。
私は、
私は、この人を、愛してはいない――。
――心は、
どうして、思うようにはならないんだろう。
こんなに私を思ってくれている人を同じように思えたら、どれほど幸せだろうに。
押し寄せる感情の波が、目頭を熱くさせる。
泣くな。
ここで泣いたら、それこそアンタは卑怯者だ。
「ごめ……んなさい。私、結婚……できませんっ」
こぼれ落ちそうになる涙の粒を、どうにかギリギリ押しとどめて、私は、直也に深々と頭を下げた。