好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
何がどうして、こういう事態になったのか。
一世一代の私の決断に、捨てぜりふを吐くでもなく、
「残念だよ」と心に刺さる呟きと寂しげな笑顔を残して、直也が、病院から去った後。
聞いた浩二の話を要約してみると、こういうことらしい。
大前提を言えば。
ハルカと伊藤君は、一度も恋人関係になったことがない……そうだ。
確かに、高校三年のあの夏祭りの夜、ハルカは伊藤君に告白をした。
その後。
サッカー部の練習がオフの日に、何度かデートらしきこともしたらしい。
ハルカから直接デートの話を聞いたことは無かったけど、私もこの辺りのことは、友達からの情報でなんとなく知っていた。
『伊藤君と三池さんの、デート目撃談』
その話を小耳に挟むたび単純な私は、『ああ、順調にいっているんだなぁ』と、すっかり二人が恋人同士になったことを、信じて疑わなかった。
でも実際は、二人は恋人同士になるには至らなかったし、高校を出てから会うこともなかったのだとか。
『伊藤君とハルカが恋人同士』
それは、ハッキリ言って。
簡単に言って。
どう言っても。
……私の、激しい思いこみだった。