好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

私の大いなる思いこみに気付いていて、浩二がそれを否定しなかった理由。


それは、実に単純明快。


根本を辿れば、『ハルカに頼まれたから』


もちろん、


『ハルカと伊藤君が恋人同士だと、私に思わせる』、なんてことを、ハルカが頼むわけはない。


頼んだのは、『あーちゃんの伊藤君への思いの橋渡し』で、それを遂行するために、浩二が勝手に目論んだことだった。


私に精神的な揺さぶりを掛けて本音を引き出し、『伊藤君を好きだ』と認めさせ、最終的にはハルカの願い通り、私と伊藤君はめでたくハッピー・ゴールイン!


と、いう筋書きだったらしい……。


そう。


ハルカは、私の伊藤君に対する恋心を、知っていた。


それどころか。


浩二曰く、


私の胸に秘めたる、


否。


胸に秘めていると思っていた、伊藤君に対する恋心――。


『それを知らなかったのは、伊藤本人』くらいで、クラスメイトもサッカー部の連中も、はては顧問の先生まで知っていたという周知の事実だったそうだ。


それを聞いたときの、私のショックといったら……。


言葉にできないし、したくもない。


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