好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

一連の説明を、浩二から聞き終わった後。


私の中にあったのは、得体のしれない脱力感。


ここ数週間の、あの怒濤の日々は、いったい何だったんだろう?


思わず、虚しい気持ちになっても、誰もとがめたりしないはず。


そして、次にふつふつと湧き上がってきたのは、浩二に対する憤り。


『私の為を思ってくれた』


なんて、感謝する気持ちには到底なれない。


そう。


私は、心の狭ーい女なのだ。


あの、病院帰りの車中での意地悪な質問。


無神経な、伊藤君とのデートのセッティング。


……まあ、これは、私もまんまと乗っかった手前、あんまり強くは言えないけど。


でも。


その後の、浩二の部屋での、あの痛い一言。


私が、いったいどれだけダメージを受けたと思うのか。


それなのに。


< 175 / 223 >

この作品をシェア

pagetop