好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「ねぇねぇ、浩二君は見たんでしょ、あーちゃんの彼。どんな感じの人だった?
カッコイイ? ハンサム? イケメン?」
「……別に。普通のサラリーマン」
興味津々のハルカの問いに、私がいる方とは反対のベッドサイドの椅子に座っていた浩二は、憮然とした表情でボソリと呟いた。
ジトっと私に向けてくるその目には、そこはかとなく漂う不満感。
左頬は、私の愛の鉄槌の名残で、未だに心持ち腫れている。
「でも、正直驚いたわよー。浩二ったら、ハルカと婚約したなんて一言も言わないんだから!」
そもそも、付き合っていることすら隠していました、このヤロウは。
チラリと、冷たい眼差しを送ってやったら、浩二は気まずげに視線をそらした。
さぞ、後ろめたいことだろう。
なぜ隠していたのかを問いつめられたら、後ろ暗い所業が芋蔓式にでてきてしまうんだから。
う~んと、冷や汗をかくがいいんだわ。
それが、因果応報っていうものよ。
それにしても。
「ハルカったら、こんなお調子者の、どこがお気に召したの?」
本当。
不思議でならない。