好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

それにしても。


子供の頃いつも、私の後を金魚のフンみたいに、ぴーぴー泣きながらくっついてきた、あの泣き虫・浩二がねぇ。


『一緒にいると安心できる』


なんて言われると、なんだか、しみじみと感じ入っちゃう。


ってベッドの向こう側に視線を送ったら、なんだか浩二が赤い顔をしている。


何、照れてるのよ。


こっちまで、もっと照れるじゃないのっ。


目線でそういう念派を飛ばしていたら、ハルカはちょっと鋭い観察眼を披露してくれた。


「それとね。不器用なくせに、一生懸命なところ」


ア、アハハハ……。


確かに。


ハルカとの約束を頑なに守って、悪役に徹した浩二。


結局最後は、自分の気持ちに嘘がつけずに、結婚直前の恋人と別れた私。


器用とは言い難い。


不器用なのは、佐々木家の遺伝かもしれない。


< 183 / 223 >

この作品をシェア

pagetop