好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

「もうすぐ、夏祭りだね」


ハルカが、窓の外にゆっくりと視線を巡らせて、昔を懐かしむように言う。


窓の外には、相変わらずの真夏の青空が広がり、


もくもくとした入道雲は、お祭りの定番の綿菓子を連想させる。


そう言えば、あの高三の夏以来、一度も見に行っていないな、神社のお祭り。


「そうだね。今年は、無理かもしれないけど、元気になったらまた一緒に行こうよ。伊藤君も誘って、私と、浩二とハルカと四人で。水風船を買って、リンゴ飴を買って……」


あの甘酸っぱいリンゴ飴。


今でも、昔と同じ味なんだろうか?


「リンゴ飴かぁ」


ハルカが、ポツリと呟く。


「うん?」


「ほら、高三の夏祭りのとき、あーちゃん、大きなリンゴ飴を食べてたでしょう?」


「うん……」


そうだった。


お店で、一番大きいリンゴ飴を買ったんだった。
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