好きだと、言って。①~忘れえぬ人~

「ふふふ。でも、びっくりよねー。まさか、浩二がカメラマンになっちゃうなんて」


ハルカの死で、色々と考えるところがあったのか、葬儀から半年ほど経ったある日。


「俺は、カメラマンになる」と言って、浩二は勤めていた会社を辞めて、黒谷隆生とかいう有名な写真家の先生に弟子入りしてしまった。


なんでも、半年の間通いに通い詰めて、根負けした先生が弟子入りを許してくれたのだとか。


まあまだ、カメラマンとは名ばかりの使いっ走りで、いつ会っても「金がねぇ~っ!」と、ぴーぴー言っているんだけど。


おばちゃんに、「これだから、お気楽な次男坊は!」と、ことあるごとにお小言を言われているみたいだけど、その瞳は、まるで少年のようにキラキラと輝いている。


そして、


私はと言えば――。


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