好きだと、言って。①~忘れえぬ人~
「ふうんって、伊藤君は高校の体育教師になったんだって、浩二、言わなかったっけ? 何で、プロサッカーチームで、ご活躍しているわけ?」
『まあ、なんだ、あれだ』
「なによ?」
『一度は、堅実に公務員になったものの、夢を、諦められなかったんだと』
「え?」
『だから、体育教師を辞めて、最後のチャンスだと思ってプロテスト受けたんだ。したら、見事に合格したとそう言うこと』
夢を、諦められなかった――。
こうと決めたら絶対引かない意志の強そうな、まっすぐな黒い瞳が、脳裏に浮かぶ。
それだけなのに。
胸の奥がどうしようもなく、ざわめく。
「そっか……。そういうことだったの」
とても、彼らしいな。
そう思っていたら、
ふうっと、電話の向こうで浩二が大きなため息を一つ吐き出した。