エンドレスワールド
3
「幸音ー帰ろうぜー」
「あ、ごめん。今日約束あんだよね。寂しいかもしんないけど、一人で帰って」
一切翡翠の目もみずに、使い古した鞄にせかせかと荷物を放り込んでいく。
「まじ!?幸音に約束!?図書館以外に!?もしかしてやっと男が…?幸音にも春が来たのか!!?」
最後に財布をしまうと、満面の笑みを作りながら机の上に転がっていた消しゴムの残骸を翡翠に向けてデコピンで飛ばす。
見事おでこに直撃し、翡翠はうおっ!と情けない声をあげながら後ろにのけぞる。
幸音はフフンと御満悦に笑うと、鞄を掴みそのままドアへ直進した。
後ろで翡翠が怪力女、オニババア、男女など暴言を吐くが一切気にする素振りもみせずに完全無視を貫き通した。
あいつを相手にしていたら、いつまでたっても帰れないからね。
ムカつくけど仕方あるまい。
若干こめかみあたりはヒクついていたが、待ち合わせの時間は刻一刻と迫っており幸音は自分に言い聞かせ、愛用の自転車に跨り学校を後にした。