亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
3.君が呼ぶ
あたしを知る奴、皆、あたしを信じない。

いや、信じたくない、みたい。



生まれた時から、あたし、少し変だったみたい。

貧乏で、何も無い家で、赤ん坊のあたしは、そこら辺に転がる石、玩具にして遊んでいたみたい。

色んな石。

丸いもの、尖ったもの、滑らかな肌触りのもの、ゴツゴツしたもの…。


集めて、転がして、また集めて…。

何が楽しいのか分からないけれど、赤ん坊のあたしは、無我夢中だったみたい。

石に夢中な間、泣きもしない、駄々もこねない。

手の掛からない子だ。

親は別段気にもしないで、あたしを放っておいたみたい。


それがその内、小さなあたしは、変なことを言い出す様になったみたい。




―――お月様の夜、風吹いて、消えるよ。





両親を指差して、あたしは言った、みたい。











その数日後。

あたしを親戚に預けて、出稼ぎに行った両親は、二度と戻らなかった。




大きな砂嵐、巻き込まれて、死んだらしい。

満月の夜だった。













あたしは、石を使うと、色んなものが見えるみたい。






少し先の未来。
遠くの景色。



石の占術が出来るあたし。






親戚も、村の皆も、子供のあたしをおかしな子だって、笑った。

あたしは、叫んだ。ずっと叫んだ。


その内、変な事を言い続けるあたしを、皆、疎ましく思った。


誰も、聞いてくれなくなった。


誰も。

だーれも。









だから、皆。










あたしの言った通り、消えた。


井戸の水を飲んだ皆、少しずつ、死んでいった。








井戸水に毒が入れられたって、知っていたあたしだけ。





独りだけ、消えなかった。








誰もいない景色。

これも全部、あたしは、ずっと前に見たことがあった。






風が無い、景色だってことも、知っていた。
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