亡國の孤城Ⅲ ~バリアン・紲の戦~
手の甲に描かれた小さな刺青。それは情報屋を生業とする者達の証、言わば身元証明の様なものだ。
彼等は基本的に一匹狼で動くが、儲けのために時折情報屋同士で協力し合う事もある。刺青は、そんな時に互いを同業者だと見分けるためのものだ。
そしてただれた指の腹は、ほとんどの情報屋が自ら火であぶった痕だ。
身元が分かってしまう指紋を消すためなのだと聞いたことがある。
勿論、馴染みの情報屋のオヤジの手にもこの刺青が刻まれており、骨太の指の腹には当の昔に指紋は無い。
情報屋は儲かるが、基本的に裏世界に位置しており、加えて常に危険と隣り合わせの仕事だ。
何処そこのやり手の情報屋が殺された、という話はよく聞く。
余程危ない情報を握っていたのか、もしくは探ろうとしていたのか。
普通ならば、よくある事だと割り切って背を向けるところなのだが………細かく観察を続けた結果、これが他人事と終わらせる訳にはいかない死体である事が分かってしまった。
死因は何か、と走らせたライの瞳は…半分原型を止めていないその頭を映し、同時に妙な胸騒ぎを覚えさせた。
…額の真ん中に、小さな風穴が空いているのだ。
「………」
頭の方に回り込んでそっと真上から覗き込めば、それは見事に頭を貫通しているのが分かった。
刃の痕でもない、矢の痕でもない……綺麗な風穴だ。
…レヴィやロキの部下達の中で、これと同様の風穴が見付かった他殺死体の話を以前聞いたが……恐らく、これはそれと同様のものだろう。
………何だか事態はややこしくなってきた様な気がする。
そして事が重大さを帯びたのは、死体が固く握り締めた片手をティーが無理矢理解いた直後だった。
散々引っかかれた末にとうとう開いた手の平から……キラリと光る小さな石が一つ。…いや、小石と言うにはえらく整った形で、光沢も美しい。
不思議に思い、取り出した玩具にじゃれるティーを持ち上げて光それを摘んで見れば…。