キミを抱く
……って思ってんのに
「ユッキーナ!」
神さまがイジワルなのか
森くんがイジワルなのか
同じ制服着た群れの中
森くんは私を見つけ
左手上げて
こちらへ駆け寄ってくる
私の足は止まる
もちろん
バスから一緒してた
メグとエミリンの足も
止まる
「おは」
私の想像と
一字一句
間違いない
森くんのセリフに
うんざり
それならいっそのこと
今後一切の
森くんが口にする言葉
私にプロデュース
させてくれないかな
「……おは」
仕方なしに
つぶやいた
朝の挨拶は
そのとおり
仕方なしに響いた
森くんは頭をかき
「なんだよ雪菜
機嫌わりいの
夕べ起こしたせい?」
私はまっすぐ
森くんと向き合ってた
だから
隣にいる
メグとエミリンの
表情は見えない
だけど
森くんの言葉に
2人がソワソワするのが
ハッキリわかる
そして
「そうだよ
変な時間に
ヒトのこと起こして
てか森くん!
変なこと言わないで」
わざとらしいくらい
イヤそうな声だして
さも
夕べ何かありました的な
ニュアンスを出す私は
すごく……。
「あ~あ
ゴメンねぇ
すまんねぇ」
ぜんぜん
申し訳なさそう
ではなく
大きなあくびを
もう一度して
うわあ 寝みてえ
と言って
森くんは
玄関へ入って行った