The Nightmare Eraser 悪夢を消すもの
「あのさ、会社で僕がいる研究チームの、新薬のことなんだけど」

 建は、製薬会社の研究室で働いている。
 話の流れが判らず美耶は無意識に、繋いだ両手に力を入れていた。

「うん。確か、外国人の博士をヘッドハンティングしたっていう……?」

「そうそう。その割に博士が全く協力する気が無いヤツね」

 建は、もぅ大変で……とわざとらしく溜め息を吐く。

「それが実はさ、悪夢を見なくする薬なんだ。まだ名前も何も決まってないんだけど、通称“ビー”って言うんだ」

「ビー……? 蜂(はち)?」

 建の手に力が入る。

「ううん。アルファベット一文字で“B”。何のBだと思う?」

「うーんじゃあ……Aが失敗して、二回目の研究、とか?」

 答えを聞いて、建の口元がふっと上がる。

「普通はそう思うだろ? それが、“獏(ばく)”なんだ。付けた人曰(い)わくね」

「ばく……?」

「うん。悪夢を食べてくれる、空想の動物……というか聖獣なのかな。体は熊、目が犀、鼻は象、脚は虎で、尻尾が牛……らしいよ」

「へぇ……なんか怖そう」

「ははっ確かに。それで……ちょっと待ってて」

 建は立ち上がって隣の寝室に行き、右手の中に何かを握ってソファに戻ってきた。

「お待たせ。で、コレなんだけど」

 建がくるりと手のひらを開いて見せると、琥珀色の飴玉の様なものが載せられていた。

「飴……?」

「そう見えるだろ? でも、侮(あなど)るなかれコレが、悪夢を食べてくれる獏こと“B”なんだ」

 建の手のひらの上のソレを、美耶はじっと見つめた。見れば見るほど、飴玉にしか見えない。

「美耶、試してみない? 効き目は保証するよ。僕が研究してるんだ。心配いらない」




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