白い吐息
面影 〜Again〜
ただの昔話だった



ただの思い出だった



ただの失恋だったんだ





形は残酷でも

ただ恋をなくしただけだ



終わったこと



もう…戻れないから



だから


忘れたんじゃないか





今更…どうしようもない



忘れたんだ



忘れたんだ




なのに…






何故また同じ思いをするの


「白居…真人…」




生物室は3階の一番奥にあった。
普段は鍵がかかっているので誰も近寄らない。
琴はいつも準備室にある不気味な人体模型と仲良くしてきた。

その日までは。

「何で?」

「それはこっちの台詞だよ。先生が遅刻してどーすんの?」

と言いながら扉の前に座っていた真人がぶっきらぼうに立ち上がった。

「…ごめんなさい」

すねた顔をして琴は扉を開けた。

「来ないかと思ったのよ」

「どーして?」

真人は昨日と同じ席に鞄を置いた。

「だって、休み時間に教室行ったときシカトされてたみたいだし」

いつものようにカーテンを開けていく琴は少しムッとしている。

「あぁ…」

思い出したように口を開ける真人。

「気付かなかった訳じゃないでしょ。戸部くんだっけ?あの子、話し掛けてきたし」

「気付いてたよ」

真人は得意の笑顔で琴に返した。

「……」

不覚にもドキッとしてしまう琴だった。

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