白い吐息
「長谷川先生、大丈夫ですか?」
田口先生が優しく肩に触れた。
「だっ…大丈夫です。少し気分悪いから…私…帰りますね」
そう言うと、琴は口に手を当てながら保健室を飛び出していった。
遠くから田口先生の呼ぶ声が聞こえたが、琴は夢中で走って校舎からも飛び出した。
真人は…
真人はもう…
私のものじゃないのに…
わかっているのに…
ダメなの…
なんでダメなの?…
曇り空の下、アパートの方向に走ってきた琴。
目的地を目前にして、鍵を学校に置いてきたことにようやく気付いた。
バカだな…
『バカだな琴子は』
『バカなんて失礼なこと言わないで下さい』
『じゃあ、利口?』
『…ではないけど』
なんの会話…?
『じゃあ天然か』
『…そうなんですか?』
『そういう風に聞いてくる辺りが天然だな』
『はぁ…』
『自分から天然だって言ってる奴はたいてい天然じゃないんだよ。琴子みたいに自分で気付かないのが真の天然なんだ』
『真のって…嫌だな』
この時、何の会話してたっけ?…
『可愛いじゃん』
『…////』
『何?オレに惚れちゃった』