幸福論

この時聞いたパパとママの軌跡。






想像した甘いものじゃなかったパパとママの恋と強い絆に、私は漠然と憧れた。





私と幸谷君に、今はまだ全然こんな絆は無い。

だから、少し傍に居ないだけで、苦しくなる。

不安が過る。





私と幸谷君の違いが会うたびに浮き彫りになるから…。





でも、好き。

苦しいけど、会いたくて、傍に居たくて、涙が零れる。





「そうだ…。
おばあちゃんにあげるの、作ろう。」





私は、チェストから、萌黄色のハンドタオルを取り出した。

そして、深緑の刺繍糸を針に通した。






四葉のクローバーと、てんとう虫をモチーフに決めて、一針一針思いを込めて刺す。

大好きなおばあちゃんに、プレゼント。

明日から、一緒に暮らせる。






幸谷君のこと聞いて貰いたいな。

おばあちゃんは、なんて言ってくれるのかな…。





ママにもパパにも恥ずかしくて言えないこともおばあちゃんには言えそうな気がした。
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