冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
「ひっ!」
叫び声をあげていた男が、紘夜の視界から逃れようとする。
「待て!」
男を追おうとする紘夜の体に、
私はしがみついた。
「やめて!もう、やめて!」
「離せ実織!ヤツを逃がすわけにはいかない。ヤツを始末しないとっーー」
「もう、傷ついて欲しくない!」
「俺はもう失敗しない。傷なんかつかない!」
「傷つくよ!もう、ボロボロでしょう? 紘夜の心が!」
ビクッ、
と、紘夜の体が小さく震えた。