冷たい雨に咲く紅い花【前篇】
私は思わず心の中で叫び、後ずさりした。

「淑女としてのたしなみ、パーティーでの礼儀作法、いずれも、普段の生活から…。
ドレスを着てお過ごしになれば、自然と立ち振る舞いが優雅になります」


「そ、そういうものでしょうか?」

「そういうものです。
さ、お着替え下さい。朝食の準備が整っておりますので」

「えっ、え?ホントに着るの?えぇーっ…」

私の抵抗も空しく、
静音さんに桜色のドレスを着せられ、ご丁寧に髪まで綺麗に結い上げてくれた。




「ーやっぱり、とてもお似合いですよ、実織様」

「は、あ…」

着慣れないドレスは、
とにかく、
自分が、自分じゃないような、そんな気分。

違う世界に迷い込んだみたい。


実際、
こんな大きなお屋敷で、メイドさんにドレスを着せられてる私は、
いつもの私じゃない。

お嬢様、いや、お姫様にでもなった気分。


ガラじゃないけど……



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