水とコーヒー
まだ抜けてしまった心が戻らなかった。

全く見知らぬ男の言葉で?

しかもWeb上にごまんとあるブログの、その中でもほんの小さなブログの中の、その中のさらに一つのエントリーの中の、その中のさらに1タームだかなんだかの言葉で?

そんなことがあるのか?ありうるのだろうか?

僕の頭の中は、その疑問で埋め尽くされていた。

「言葉にはね、力があるから。例えば一冊の小説が世界を変えることだってあるでしょ。聖書だって神の“言葉”だし、コーランだってそうでしょ。でもその言葉の数々が出された時は、ただの“言葉”に過ぎなかったのよ。誰の、だとか、どんな、だとかはあまり関係ないの。そのときその人にとって一番大切な言葉っていうのがあるものなのよ。それこそ人生…人の生き死にに影響を与える様な、ね」

疑問を見透かした様に先輩は語った。

僕に対して、というよりは、独り言のように。

自分に言い聞かせるかの様に。
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