水とコーヒー
先輩は僕の誘いを快くOKしてくれた。

それまで全く繋がりのない立場だったので警戒されるかと思っていたのだが、正直に目的を告げたのがよかったらしい。

「もう少し悩んでからくるかと思ってたわ」と笑われたのが若干気になったが、まあ善は急げと思ったんですよ、と返すと、先輩はまた笑いながら「その調子ならあと三年くらいは大丈夫だったかもね」と云った。

なにがあと三年くらいなのかはわからなかったが、仮にいまの状態が三年も続いていたらと思うと、とてもじゃないがまともじゃいられない。

考えただけで、一瞬にして血の気が引き、僕は返すべき言葉を失ってしまった。

そんな様子を見て心情を察したのだろうか。先輩は「軽率だったわ、本当にごめんなさい」と、かえってこちらが恐縮するくらいに詫びてから「詳しい話を聞かせてくれる?」と、僕の目を真っ直ぐ見つめた。

その目には霊感など全くないはずの僕でも感じるほどの、なにか強い力があって、僕は自分の決断が間違っていなかったことを、どこかで確信していた。
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