Au Revoir―再会―


ガシッと両肩を掴まれたあたしは、謙の胸に包まれた。


いつも背中を見ているばかりで、こうして真っ正面に立つことなんて中学生以来。


抱きしめられるなんて、生まれて初めてのこと。


謙のことを意識し始めてから、真っ直ぐ彼のことが見られなかったから。


謙の隣には、いつもお姉ちゃん。


あたしは、二人の背中をずっと追っていたんだ。


ずっと好きだった、謙のこと。


認めたくなかったけど、心は正直で……。


長身の謙の胸元にすっぽりと収まったあたしは、この想いを言葉にすることはできなかった。


何から伝えたらいいのか、
何を伝えたらいいのか、

それらのことさえ、わからなかった。


でも、伝えなきゃ。――あたしの気持ちを。



「……ありがとう。本当にありがとう。…ヒック…ヒック
あたしも好きだった、謙のこと。ずっと、ずっと大好きだった。忘れたくても忘れられなくて……」


「そっか。俺のこと、好きでいてくれてありがとう。嬉しいよ」


再び、ギュッと抱き締められたあたしは、恐る恐る謙の背中に手を回した。


それを感じ取ったように、謙はあたしを優しく包み込んだ。



< 45 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop