喪失
あまりに現実味が無さすぎて。

とんとん拍子で全てが進んでいく。

あの人間味が無い透明な病室に彼女を取り残したままで。

涙すら出ない。

俺もどこかに取り残されてしまっているのだろう。

時が過ぎても、いつまでも。

溶けない雪のように。

「私のことは忘れて」

空耳が聞こえる。

性格が悪いなお前は。

そんなこと言われたら、忘れられるはず無いのに。
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