もしも僕らが、、、

最初に、この事実に気付いたのは中学一年生のとき、
みんなが入る部活を決めているとき、あたしは特にどこに入ろうというわけでなく、ただ気まぐれに部活見学をしていた。
運動部を回ったり、文化部を回ったりと、ゆるゆるな生活を送っていたはずのあたしは、ある時、校舎内を歩いていると異変に気付いた。
吹奏楽部が練習しているせいか、本当に微かにしか聞こえないが、ピアノの音がする。
残念な事にあたしはピアノなんかに興味はなく、吹奏楽部にも興味がなかったため、何事もなかったかのように通り過ぎようとした。

そんな時、何故かピアノの音が近付いてくる気がした。

理由なんか今でもわからないが、とにかく怖かったあたしは走り出した。
でも、それより遥かにピアノの音が近付いてくる気がして、あたしは恐怖のせいで立ち止まってしまった。
1人、誰もいない廊下でパニックを起こすあたしは、耳に大音量のピアノの音が入ってくるのを最後に、気を失った。







…あたしが目を覚ましたのはそれから何時間もあとの事だった。
1人、廊下で倒れていたあたしを、たまたま通りかかった吹奏楽部員の子に助けられたらしい。
体に特に以上はなかったため、とりあえずベッドに寝かしておいたそうだ。
保健の先生はあたしが状況を理解すると、「何があったの?」聞いた。
もしも、ピアノの音が近付いてきて、恐怖で倒れてしまった。と言ったとして、果たして信じてくれるだろうか。
第一、あたしだって何故倒れていたかわからないのに、他人に、それも先生に説明しろだなんて無理な話だ。
沈黙が多少いたかった保健室で悩みに悩んだ結果、あたしは「わかりません。」と答えた。
先生はため息をつくと、あたしの頭を撫でて「今日はもうゆっくり休みなさい。お家の方には連絡してあるから。」と言った。
一気に脱力感を感じたあたしは、何故かこぼれそうになった涙を堪えてベッドにうずくまり、親が迎えに来るのを待っていた。

…だけど、結局約束の時間に親は来なくて、奇跡的に鍵を持っていたあたしは、先生の車に乗り、家へと帰った。

< 2 / 6 >

この作品をシェア

pagetop