流華の楔



今回の標的が長州藩士であることに、失念を抱いていないわけではない。


計画も、何もかも。


同胞としても、理解しがたい。





「(あの二人が関わっていなきゃいいんだけど…)」






近藤たちが御用改めする中、ふと次の店に目をやると――…




「あれは…」



軒下に釣り下げられている荷物のようなものに、見覚えがあった。あの時、兄が持っていたものではないかと駆け寄る。




「…間違いない」


この模様。
間違いなく兄の荷物だ。


しかも、物の陰に武器が多数置かれている。




「これは…!」


「どうした新崎!? 何か手がかりでも見つけたか?」


「………」



永倉の声にも反応できないほど、和早に焦りが生じていた。



「新崎?」


「あ…いいえ」




その店の名は『池田屋』。




店に入っていく近藤を横目に、和早は立ち尽くした。
< 106 / 439 >

この作品をシェア

pagetop