流華の楔



夕刻。



「………」


巡察から戻った和早は、信じられないものを見た。




「これはいったい…」



それそのものは、れっきとした簪(かんざし)だ。
しかし、簪を使う者などここにはいない。

いたら逆に困るが。




「贈り物…と考えるのが正しいかな? となると、私が女だと知っている人物が…?」



和早はしばらく考えを巡らした。


「………」




よく見れば、かなり趣味が良い。



「てことは……普段から洒落込んでる土方さんか原田さん辺りかな」




和早はさっそく、その簪を片手に部屋を出た。
< 123 / 439 >

この作品をシェア

pagetop