流華の楔





「斬ったんですか」




無意識に口からでた言葉に自分でも驚いた。


聞くまでもないのに。
目の前にいる男が、間もなく語るだろうに。


斎藤は一瞬はっとこちらを見たけれど、すぐに逸らした。




「ええ、斬りましたよ」




平淡な声で言う。
しかしその態度に抵抗はない。

それだけの理由があるなら、斬って当然だと思ったから。






「そのおかげで、脱藩せざるをえなくなりましたけどね」


「……それで新選組に?」


「まあ、そうなりますね。あてもなくさ迷ってた時、拾ってくれたのが近藤さんでした」



懐かしむような横顔が目に入る。
たった今己の過去を話し終えたとは思えぬ、穏やかな表情だった。



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