流華の楔




土方は、相手に罵声を浴びせることはあっても殴ることはしない男だった。

沖田を心配するが故の行動だったのだろうが……。




「どれだけ些細であろうと私闘は厳禁。ご自分でお作りになった法度をお忘れですか?」

「くっ…」



有無を言わせぬ和早の台詞に押し黙る土方。

殴るために伸ばした腕を引き、行き所を失った右手は結局刀へと移った。




それに引き替え、沖田は。


「あーこわかったー」



良くも悪くもいつも通りだった。

緊張感がない。



「沖田さんも。そうやってふざけるから殴られそうになるんですよ」



言っていて、己は本当に元隠密なのかと思った。

まるで一般的な後輩である。







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