流華の楔
「負けはしませんよ、少なくとも会津は。勝ちもしませんけど」
「…なに?」
「昨年うるさい旧臣を黙らせて官軍と同等の火器を半数規模調達させたのをお忘れではないはず」
和早は口元に笑みを浮かべた。
「兵の数は旧幕府軍が大幅に勝っていますから、それを踏まえれば惜敗…運が良ければ引き分けに持ち込めるかと」
ただし、それは地形の不利を考えなかった場合だ。
引き分けなどという言葉は、まやかしに過ぎないのかもしれないが。
「だといいが…」
「いずれにせよ、善処します」
「頼もしいな。…だが、無理はするなよ」
捨てたとは言えど、敵の同士はお前の生まれ故郷だからな、と容保は言う。
和早は頷き、その場を後にした。