流華の楔
「その様子では、昨夜はかなり飲んだようですね」
物腰柔らかな言葉と共に、ゆっくりと男が入室してきた。
彼は、山南敬助。
刀なんて握れるのかと不安になる雰囲気の彼は、土方の“隣”に座る男だ。
局長が三名、副長が二名で構成されているうち、山南は土方と共に副長の座におさまっている。
「…すんません」
永倉たちも彼には頭が上がらないようで、面目なさげに謝った。
「新崎さんは行かなかったのですか?」
「…? 酒宴なら行きましたよ?」
「いたな」
「うむ。いた」
「俺より飲んでました」
傍にいた三人が口々に言う。…何故か遠い目をして。
「斎藤君よりも飲んだのですか?酒にはかなり強い方ですよね、彼は…」
斎藤、それに土方は酒豪として知られている。
彼が体調不良だというのに、和早は平気そうにしているのが山南には不思議だった。
「新崎はそれを凌ぐ強さなんですよ。あーもう頭いてー」
「おい新八どこ行くんだよ…」
歩き出す永倉を、原田が追う。
「運よく今日は非番なんでな。もっかい寝る」
「けっ…てめぇは一生眠ってろ!」
「ぬおっ!!」
原田の一撃は、再び永倉を闇へと誘った――…