流華の楔
不意の真
九月に入り、涼しさも感じられてきた頃――。
「た、大砲…!?」
和早は珍しく驚愕の声を上げた。
“攘夷派である天誅組には資金を出したのに、新選組には出さなかった”という理由で屯所から持ちだし、大和屋の土蔵に撃ち込んだというのだ。
芹沢への恐れからか誰も火を消そうとせず、炎は燃え広がった。
芹沢といえば、土蔵の屋根の上で高笑いしていたらしい。
さすがの和早も頭を押さえて苦り切る。
弁解の余地がない、庇いようのない暴挙だった。
「そーみたいですよ。まったく、仕事増やしの達人ですかねぇあの人は」
「斎藤さん、近藤さんが出掛けた場所は……」
「…さあ。松平公の所じゃないですかね? 土方さんがそれっぽいこといってましたし」
斎藤も心なしか神妙な顔つきで答えた。