流華の楔




瞑想しているらしい土方を和早はじっと見守るが、突然「あ」と言って目を見開く土方に若干驚いた。

なんだ、いきなり。



「言っとくが、俺は死者に祈る趣味はないからな」

「芹沢さんですか?」

「そうだ。つか、ぜってー地獄行きだろあの人? 祈っても届かねぇよ」



笑いを噛み殺し、それでもくつくつと喉で笑う土方。



「嬉しそうですね…」


「嬉しいに決まってんだろ?」


「まあ…わかりますよ、その気持ち。自分の尊敬してる人が頂点に立つことほど、誉れ高いことはありませんからね…」


「だろ?」




光を支えるのは、影。



汚れ役は影の人間が引き受ける。




光は、いつだって光でなければならない。





土方はそれを十分理解し、近藤の影でいようとしている。
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