僕とあの子の放課後勝負

夜は変な夢を見た。
雨月さんが遠くを見つめているだけの、ごくシンプルな夢。だけど、笑わない。話さない。こちらを見てくれない。その夢は、雨月さんがこちらを振り向いてくれるのはまだ大分先だと言うことを暗示していたような気がした。

…そんな夢を見た後は、大抵いつも寝起きが悪い。

「――やばい!」

飛び起きて、時計を確認する。支度をして朝食を食べて、また遅刻すれすれの時間に家を飛び出す。今日は何とか、間に合いそうだ。

校門の前に、社会科の教師が立っている。分厚いファイルを持って。

「お、おはようございます」
「菅谷ぁー。服装が乱れてるぞ」
「今、直すところなんです!」

ワイシャツを制服のズボンに入れて、髪型をぐしゃっと整える。それでやっと満足したのか、教師は「早く入れ」と言いながら別の生徒に絡んでいた。

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