運命の人〜先生と私の10年間〜
「なぜ逃げるんだ。」


息を切らせながらこまっちは言った。

「………」


何も言えず私はまた泣きだした。そしてまた腕を払い走りだした。



「桜井!!」
こまっちは私を追いかけようとした。その時後ろから


「どうしたんですか?駒山先生?」




寺門だった。何もかも見ていたのだ。タイミングのいい所で声をかけた。

「な…なんでもないんですよ。寺門先生こそどうなさったんですか?」


椿が走って行ったほうをチラチラと気にしながらこまっちは言った。


「私はクラスの見回りです。」


ニッコリ微笑んでそう言った。


こまっちは溜め息をついて職員室に戻っていった。
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