年下の悪魔



…それから一週間が経った。


まだ正月ボケと失恋の痛手が消えない怠さの中、私は仕事に向かった。


正直、彼のメモリーはまだ消せないでいる。

彼の指定着信も解除出来ないでいる。

ひょっとしたら、もしかしたら…っていう期待を消せないでいる。

情けない。

それでも朝は来るんだから、働かなきゃ。




「ゆいちゃん、どうしたの?元気ないじゃん。」

「あはは、何でもないですよ~」

作りたくもない作り笑顔でごまかす。

私の職場、家の近所にある焼肉屋さん。

焼肉屋っていっても中華屋さんとの融合って感じのお店。

高校生の頃からバイトに来てるから、接客は知らず知らずのうちに出来るようになった。

営業スマイルなんか得意中の得意だけど、今はさすがに煩わしい。

ちなみにこのお店、そんなに広くないけど、近所の人や遠出してる人がふらっと立ち寄りたくなるような雰囲気がある。

出前もやってるからか、家事に追われる主婦や、忘年会、新年会で世間が賑わう年末年始の今、こう言っちゃ何だけど、私に取っちゃ稼ぎ時。


高校生の頃からバイトさせてもらってるんだから、頼りにされてるのは嬉しい。


こんなに忙しくしてる間は嫌な事を忘れられる。

辛い事も忘れられる。

元々、仕事は嫌いじゃないし。





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