RUN&GUN
「西の市の、下駄屋の奥方、お福さんを知ってるか?」
「ああ、お得意様ですね。毎日のように、うちの駕籠を使ってくださっているようですが」
朔太郎が、ふと顔をしかめた。
お得意様というわりに、朔太郎はお福のことが、苦手なようだ。
言い方からして、直接は知らないのかもしれないが。
「接客は、できないって言ってたな。お福さんとも、話したことはないのか?」
与一の問いに、朔太郎はとんでもない、というように、首を振った。
「お福様なんて、お姫様ですよ。わたくしなぞ、お顔も見られません。あちらも、わたくしのことなど・・・・・・」
ここまで言って、朔太郎は相変わらずそっちで二人の世界に酔っている三郎太とお蓉に聞こえないよう、こそっと声を潜める。
「お福様って、悪いですけど僕は好きになれないんです。僕のような下男は、見るのも汚らわしいというような態度をされるし」
「へぇ? 下男がいるからこそ、店は成り立つのにな。お福さんの食い物一つだって、下男下女が作ってるんだろうに」
与一の言葉に、朔太郎は力を得たように、こくこくと力強く頷く。
少し前までは、与一は恋敵だったのに、そんなことは、すっかり忘れてしまったようだ。
それとも見事に失恋したお陰で、返って吹っ切れたのかもしれない。
「そうですよ。こちらの旦那様も、そう仰ってくださいますし、菊助さんだって、自分もそこから上がれたんだから、皆も頑張れって仰ってくださいますのに。上のかたがああだと、そのかたのために働こうという気もしませんよね」
「ああ、お得意様ですね。毎日のように、うちの駕籠を使ってくださっているようですが」
朔太郎が、ふと顔をしかめた。
お得意様というわりに、朔太郎はお福のことが、苦手なようだ。
言い方からして、直接は知らないのかもしれないが。
「接客は、できないって言ってたな。お福さんとも、話したことはないのか?」
与一の問いに、朔太郎はとんでもない、というように、首を振った。
「お福様なんて、お姫様ですよ。わたくしなぞ、お顔も見られません。あちらも、わたくしのことなど・・・・・・」
ここまで言って、朔太郎は相変わらずそっちで二人の世界に酔っている三郎太とお蓉に聞こえないよう、こそっと声を潜める。
「お福様って、悪いですけど僕は好きになれないんです。僕のような下男は、見るのも汚らわしいというような態度をされるし」
「へぇ? 下男がいるからこそ、店は成り立つのにな。お福さんの食い物一つだって、下男下女が作ってるんだろうに」
与一の言葉に、朔太郎は力を得たように、こくこくと力強く頷く。
少し前までは、与一は恋敵だったのに、そんなことは、すっかり忘れてしまったようだ。
それとも見事に失恋したお陰で、返って吹っ切れたのかもしれない。
「そうですよ。こちらの旦那様も、そう仰ってくださいますし、菊助さんだって、自分もそこから上がれたんだから、皆も頑張れって仰ってくださいますのに。上のかたがああだと、そのかたのために働こうという気もしませんよね」