向日葵の種
4




「――もうすぐ、下り電車がくる。それで帰りなさい」


適当にあった白シャツを細い体に通し、着替えた僕は、抵抗する中野ちこの腕を無理矢理引っ張ってきた。
無人駅の名の通り、人は誰も居らず、蒸し暑さと蝉の煩さが響いている。
カビ臭ささが、ツンと鼻にくる。


「いやだって言ってるでしょっ!」


腕を振り払われ、中野はムスッと頬を膨らませた。
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