出会い・白輝伝
「わかりました」

絖守が静かに応えた。

「子供達のために、あなた
の枝をください。屋敷に
植え一緒に育てたいと
思います。霞…頼みます」

霞が放つ念糸は細く人の
皮膚など簡単に切れる。

霞は手近かな枝に念糸を
絡め何本か切り落とし
一太に手渡した。

楓の運命をどうすることも
出来ないことは、幼い一太にも
判り黙って枝を受け取った。

「皆…安全な場所まで
下がりなさい。嵐鬼」

絖守の呼びかけに嵐鬼が、
去り行く雨雲を呼び戻した。

間もなく雨と共にかみなり
雲が近づく。嵐鬼が右手を
高く上げおろす。眩い光と
轟音が鳴り響き。

雷が楓を切り裂き炎が上がる。

燃え出した楓の本体から
薄紫色の気がゆるりと
立ち上りはじめたのを見定め
絖守は、白蛇にうなずく。

白蛇は霧散しょうとする
楓の気を集め手毬大の球体を
作り自らの気で封じ込めた。

それを泣いているニ太
にそっと持たせる。

「また会える。泣くな」

薄紫色の珠をぎゅっと
抱きニ太はこっくり
とうなずいた。
< 58 / 60 >

この作品をシェア

pagetop