魔女の報酬
「簡単なことよ」

 メディアは顎を得意げに突き出した。

「ドラゴンの中の時を戻したの。あいつ、卵まで戻ってしまったわ」

 ロランツは感嘆の眼差しを投げかけた。

「君は最高の魔女だよ!」

「とーぜん」

 彼女はそう言おうと口を開きかけたのだが、なし得なかった。ロランツが彼女に抵抗する間も与えず、すばやくそしてまた強引に自分の胸の中に引きさらったからだった。

 どきどきどきどき。

 メディアの意に反して心臓は鼓動を速め、体は震え、抵抗する力を失った。彼女を優しく包み込むロランツの胸は、広くたくましかった。

「僕の愛しいメディア」

 ささやく声が彼女の耳朶を打った。
 後頭部に手があてがわれ、くいと上向かされる。

(あっ!)

 ロランツの顔がかぶさってくる。彼は強引に自分の唇を彼女のそれと重ねた。
 長く甘やかなキッス。そして、それは王子が魔女に払うべく報酬の手始め。

         FIN
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