魔女の報酬
 あの院長の言いそうなことだ。メディアは内心苦笑した。当たっているだけに言い返せない。さっきだって最強で最悪の魔神を喚び出そうとしていたのは、単にソバカスを取りたかっただけだと知れたら、また物笑いの種にされてしまうことは間違いがない。

 それにしても。

 むかむかむか。

 思い出しただけで腹が立ってきた。このきれいだが、無頓着な王子が勝手に入ってきて、数週間も前からせっかく整えていた『魔法の場』の平衡を破ってしまわなければ、魔神の召喚に成功していたものを……。

 誰にも邪魔されたくない魔法を使うときには、あらかじめ結界を張っておくべきだという、魔法使いとしての基本的な常識を完璧に失念しているメディアにとって、目の前の王子ほど癪に触る存在はない。

「で、報酬は何なの?」

 つんけんとした口調で問う。魔法院からの紹介でなければ、こんな奇麗だが癪に触ることこの上ない王子なぞ門前払いにしてやったろう。

 魔法院には人一倍世話になっている身のため、そう無碍にするわけにもいかないのがよけいに腹立だしい。なら、むこうから諦めるようにしむけてやる。

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